Miku Ito
カトリーナ・サシャバル / Katrina Sashebal
サシャバル伯爵家で使用人として働くカトリーナは、とある事情から過酷な虐待に耐える日々を送っていた。ある日、シャルルの身代わりとして冷徹と噂される「呪われた王子」クラレンス殿下のもとへ送られることになる。長年の虐待で心に深い傷を負ったカトリーナは、豪華な屋敷でも怯えを隠せない。そんな絶望と不安が渦巻く中、ついに屋敷の主であるクラレンスとの初対面を果たす。身代わりの令嬢と孤独な王子、2人の運命が静かに動き出す。
吹雪でずぶ濡れのカトリーナに対し、クラレンスは「同情を誘う芝居」と嫌悪感を剥き出しにする。しかし、カトリーナは濡れた体を拭くどころか、濡れた絨毯を拭き取り必死に許しを請う。その異常な怯えに違和感を抱いた後、高熱で倒れた彼女を抱きとめた彼は、その身の軽さに驚愕する。目覚めた彼女の純真な反応に毒気を抜かれつつ、彼は確信した。この少女は、噂に聞く「傲慢なシャルル」ではない――と。
「働かなければ食事をしてはいけません」と怯えるカトリーナの体に刻まれた、無数の傷跡。あまりに痛々しい真実と彼女の言動に、クラレンスは堪らず彼女を抱きしめた。「謝る必要はない、本当の名前を教えてくれ」真っ直ぐな瞳に射抜かれ、震えながら名を明かしたカトリーナに、彼は「お前のことが知りたい」と優しく告げる。初めて得た居場所に驚きつつ安堵する彼女だったが、その裏では生存を知ったシャルルが、どす黒い復讐心を滾らせていた。
2人は彼女の願いで雪原へと向かうが、そこで転んでしまった彼女の姿に、クラレンスは思わず声をあげて笑い出す。少しずつ心の距離を縮める2人だが、その直後に届いた報告書が空気を変えた。彼女が侍女の子として虐げられてきた事実、そして身代わりとして捨てられた経緯。カトリーナが経験してきた地獄を知った彼は、その笑顔を2度と失わせてはならないと、静かに覚悟を決める。
舞踏会に向けて令嬢の教育を受けるカトリーナは、クラレンスたちと王都へ買い物に出かける。「これも練習だ」と強がりながらも服を買い、不器用にエスコートしてくれる彼に、彼女は心からの幸せを感じていた。しかし、屋敷の皆への贈り物を買いに一人になった隙に、運命は一転する。目の前に現れたのは、憎悪に満ちたシャルルとサシャバル夫人だった。穏やかな時間は、最悪の再会によって打ち砕かれる。
シャルルたちに再会したカトリーナは、大切な贈り物を踏みにじられ、店員を庇って打たれてしまう。しかし、彼女は「もう伯爵邸には戻らない」と初めて決別の意志を強く示した。逆上したシャルルが手を上げようとした瞬間、クラレンスが立ちはだかる。彼を侮辱するシャルルだったが、その正体が第一王子だと判明し形勢は逆転。クラレンスは静かに氷の刃を突きつけ、その横暴を断罪した。
負傷したカトリーナを、クラレンスは自責の念を込めて抱きしめる。彼からの「大切な女性」という言葉と、贈り物を喜ぶ姿に、彼女は救われた思いで涙を流した翌日、2人は王城へと向かう。サシャバル家への未練を断ち切ったカトリーナだったが、待ち受けていた王妃は、報告と異なる彼女の姿に険しい表情を浮かべる。王族の威圧感を前に、カトリーナは己の身分を思い知り、再び卑屈な心に支配されそうになるが––。
険しい顔の王妃に怯えるカトリーナだったが、実際は「お人形みたい」と歓迎の抱擁を受ける。クラレンスは両親の前で彼女との結婚を宣言。驚くカトリーナだったが、王から真意を問われ、彼の優しさに触れて心が温かくなった日々を素直に告白する。孤独だった息子の心を溶かした彼女に、王妃たちは喜び2人の仲を承認した。安堵したクラレンスは、彼女を呪縛から解き放つため、サシャバル家からの除籍を父へ願い出る。
庭園で2人きり、クラレンスから「愛している」と真っ直ぐな想いを告げられたカトリーナ。身分差への不安を抱きつつも、彼の隣に相応しい女性になろうと、舞踏会に向けてダンスや礼儀作法の猛特訓に励む日々を送る。そんな中、ついにサシャバル家からの除籍が正式に決定したという知らせが届く。ついに過去の呪縛から解き放たれ、自由の身となったカトリーナは、自分を救ってくれたクラレンスに感謝を伝えるのだった。
クラレンスの留守中、突如現れた謎の男たちにカトリーナは連れ去られてしまう。背後にいたのは、執念深く彼女を追っていたサシャバル夫人とシャルルだった。「お前が幸せになることは許さない」と激昂し、手を上げる夫人。しかし、愛を知ったカトリーナは怯むことなく、強い眼光で彼女たちを見据えた。その態度がさらに怒りを買い、彼女は再び、忌まわしきサシャバル家の屋根裏部屋へと監禁されてしまう。
帰還したクラレンスは、使用人たちの証言からカトリーナがさらわれたことを知り、怒りとともにサシャバル邸へ急行する。一方、監禁されたカトリーナは母の遺品を繋ぎ合わせ、窓からの脱出を試みていた。間一髪で駆けつけ、彼女を助けようとするクラレンス。しかし、狂気に満ちたサシャバル夫人がナイフでロープを切り裂く。カトリーナの体が宙に投げ出された瞬間、クラレンスは絶望に染まり、全力で彼女の名を叫ぶのだった。
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